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「Tradosを使えれば一人前の翻訳者」にちょっと待った!

みなさん、こんにちは。KokoDoki Companyの藤原です。
徐々に風邪の症状がひどくなります(笑)。この回復力のなさには涙しか出ませんが、でも、こんな状態でも自宅で仕事だと周りへの迷惑を気にしなくてすむので、フリーランスのメリットだと考えています。

さてさて翻訳祭も終わり、色々なところで、色々な感想の声などが聞こえるようになってきましたが、なにやら「Tradosを使えれば一人前の翻訳者」という話になっているのでしょうか?どこから出てきた話なのか不明ですが、そんな説があるのであれば、びっくりの一言ですね。

以前、Tradosを使えない(使ったことがない)弁理士の方に対して「翻訳ツールを使えない(使わない)=特許の仕事ができないって言っているようなもの」とSNSで叩いている人を見たことがありますが、それはそれであまりにも短絡的で浅はかとしか言いようがありません。というか、なぜ翻訳ツールが判断基準なの?という疑問だけが残ります。

Tradosを使えれば一人前の翻訳者なの?

翻訳支援ツール

翻訳者同士で話をしていて、その人が「Trados」など(マクロを含む)、何らかの翻訳支援ツールを使用して翻訳しているという話を聞いたら、「あ、この人は翻訳ができるな!」と思うのかと問われれば、答えは「No!」ですね。

「翻訳支援ツール使ってますよ」と聞くと、「あ、そういうツールを使うことに抵抗がない人なんだな」とか、「色々なソフトを使い慣れているのだろうな」とか、「パソコンの操作は得意な人なんだな」とか、「翻訳のレベル」がどうのこうのは、まったく関係なく、パソコンに関する知識が豊富な人なのかもしれないという印象を持つのみです。

ま、翻訳支援ツールが使えるからといって、ITスキルが高いかといえば、それもまた違う話だと思いますが、

もし周りに「Tradosを使えれば一人前の翻訳者」と言う人がいようものなら、そっとその人の近くから離れていく・・・かな(笑)。

色々意見を言っても大丈夫な人相手であれば、「おいおい、ずいぶん翻訳という仕事をなめてくれるじゃないか」ぐらい言えるかも(笑)。

というよりも、「Tradosを使えれば一人前の翻訳者」なんて発言を聞いたら、その人に対する信頼が一気に失われると思うので、そんな発言をしている方は、重々気をつけた方がいいと思いますよ。自分で自分の首を絞めていることになりかねません。

翻訳支援ツールは、一つの手段でしかない

KokoDoki Companyでも、翻訳支援ツールを使いこなすことができない方々を対象に、すぐにでも実ジョブで使用できるレベルになるよう、お手伝いできればと考えて始めた講座ではありますが、その講座の中でも、ご購入いただいた方には、翻訳支援ツールに100%依存することがいかに危険であるかもお伝えするようにしています。

どうしても、便利な機能にばかり目がいってしまいがちですが、例えば、置換機能など、自分の想像を超えた範囲まで置換してしまう可能性もゼロではなく、後から気づいて、「え?まさかここが置換されているの?」ということも、最初の頃には多々ありました。

そのため、一括置換してしまうことはせず、若干手間はかかりますが、原文と訳文とを突き合せつつ、置換していくようにしています(これは訳文の見直し時の作業の話で、翻訳中は、一括置換機能は一切使用しません)。
このときに、翻訳支援ツールが便利なところは、その原文と訳文との比較が容易にできることであって、その容易さから、翻訳支援ツールの導入をお勧めしてはいます。

ただ、その容易さを勘違いしてしまうことに、恐怖を感じるので、そこまで翻訳支援ツールを信頼してはダメですよ、ということを伝えるようにしています。

翻訳支援ツールと翻訳レベルとが無関係なワケ

先月、久しぶりにチェック案件を担当しました。翻訳支援ツールを使用しての校正という案件でした。

もちろん、翻訳支援ツールを使っているから、レベルの高い翻訳者だという考えも一切なく、普通の案件と何ら変わりなく、原稿を受け取りました。そして納品しましたが、どちらかと言えば、翻訳支援ツールのメリットを活かすことなく、翻訳支援ツールに振り回されているかなという印象のみ残りました。

実は、翻訳支援ツールに振り回された訳文というのが、一番危険なんですよね。実際の成果物は、翻訳支援ツールを使っているかどうかなんて、まったく関係ないのです。

「翻訳支援ツールを使っていますよ」と伝えることによって、翻訳会社の方が安心してくれるということはあるかもしれませんが、この「安心」は、翻訳の品質に対してではなく、翻訳支援ツールの使用について、翻訳会社が指導する必要がないという点からみた安心感だと考えています。

翻訳はシンクロナイズドスイミング

私はよく翻訳という仕事について、シンクロナイズドスイミングのようなものだと話をすることが多いのですが、水面下でどんなに足を動かしていても、水面下に潜ったときに、変顔になったとしても、水面上に出ているものが綺麗であればまったく問題ないのであって、翻訳成果物に対しても、翻訳支援ツールを使っているかとか、どのぐらいの時間をかけているか、とかどれだけの調べものをしたのか、などは翻訳成果物の評価対象には一切なりません。

成果物そのものに対する評価がなされるのであって、そういった背景など、一切関係ないと考えているので、「翻訳支援ツールを使える」ことと「翻訳の質」とは必ずイコールの関係にはなるわけではないと思っています。

ただ先にも書きましたが、翻訳支援ツールを使った方が便利な点については、積極的に使用するといいなと考えています。

まとめ

「Tradosを使えれば一人前の翻訳者」という話が聞こえてきたときには、何というのでしょうか、「え?まさか?ウソだよね」という思いしかありませんでした。

こうした「翻訳支援ツールマスター講座」を主催していれば、翻訳支援ツールを全面的に崇めているのかと思われるかもしれませんが、私たちKokoDoki Companyでは、翻訳支援ツールの得意とする点、ここは頼ってはいけない点などをお伝えする役割を担っているとも考えています。

仕事で使用していて、青くなりながら、こうした翻訳支援ツールのメリットとデメリットを把握していくことが、本当は一番良いのかもしれませんが(失敗することで人は強くなる)、ただ、仕事を失うリスクも背負うこととなるので、そのリスクを可能な限り減らすお手伝いをしているというか、

わりと、「そこまでは翻訳支援ツールを信頼しないでください」と普通に伝えてしまうので(伝え方はもう少し柔らかくしていますが)、翻訳支援ツールを販売している会社からは、「あれ?使用を推奨をしているの?それとも?」と思われかねません。

また、「翻訳支援ツールを使いこなすことができれば、翻訳者として一人前」という評価が下されるのであれば、翻訳という職業自体がなくなる日は近いと考えざるを得なくなりますよね。

「翻訳支援ツールを使えること」と「翻訳レベルが高い」ことは必ずしもイコールではありません。でも、イコールではないからこそ、人工知能の発達をそこまで恐れる必要もないと言えるのではないでしょうか。

「Tradosを使えれば一人前の翻訳者」と考えている方がいらっしゃるのであれば、今一度「翻訳とは何か?」と考えてみていただければと思います。

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